俺自身は、痙縮の症状はない。
手足のしびれや感覚の違和感はあっても、筋肉が勝手に突っ張ったり、握った手が開かなくなったりすることは経験していない。
でも、入院していた病棟や、ブログを通じて知り合った当事者の方から「手がずっと握ったまま開かない」「足が突っぱって歩きにくい」という話を何度も聞いてきた。痙縮(けいしゅく)は、脳梗塞の後遺症の中でも、生活への影響が大きいものの一つだという。
今回は俺自身の体験ではなく、聞いた話と調べた情報をもとに、痙縮とは何か、そしてどう付き合っていけばいいのかを整理する。
痙縮とは何か
痙縮とは、筋肉の緊張が過剰に高まり続け、手足が勝手に曲がったり、突っぱって動かしにくくなったりする状態のことだ。
ポイントは、これが「筋肉そのものの異常」ではないという点だ。原因は、運動をコントロールしている神経系の障害にある。脳梗塞によって脳の一部がダメージを受けると、筋肉を緩めるための信号がうまく届かなくなり、力が抜けなくなる。その結果、手の指が握ったまま開きにくい、肘が曲がったまま伸びづらい、足の先が下向きに曲がってしまう、といった症状が出る。
「麻痺」「拘縮」「痙縮」の違い
このあたりは混同されやすいので、整理しておきたい。
- 麻痺:筋肉を動かす神経の指令が届かず、力が入らない状態
- 拘縮:関節が硬くなり、動かせなくなった状態
- 痙縮:筋肉の緊張が過剰になり、勝手に動いてしまう状態
麻痺があるからといって痙縮があるとは限らないし、逆もまた然りだ。ただし、痙縮を放置すると関節が固まって拘縮に進んでしまうことがあるので、この2つは無関係ではない。この違いを知らずに間違ったケアをしてしまうと、かえって症状を悪化させるリスクがあるらしい。
痙縮が起こる仕組みと原因
痙縮は、脳梗塞・脳出血といった脳卒中のほか、脳性麻痺や脊髄損傷、外傷性脳損傷などでも見られる症状だ。脳や脊髄のどの部分がダメージを受けたかによって、痙縮が出る部位や重さは人それぞれ変わる。
発症直後からいきなり強い痙縮が出るケースは少なく、多くの場合は発症から数週間〜数ヶ月かけて徐々に現れてくるようだ。急性期を乗り越えて、いざリハビリが本格化する頃になって「手が開きにくい」と気づく人も多いと聞く。
日常生活への影響
痙縮は見た目の変化だけの問題ではない。着替え、入浴、トイレといった基本的な動作に支障が出ることがあるし、痙縮そのものがリハビリの妨げになってしまうこともあるという。
手足の突っぱりが気になって外出や人との交流を避けるようになり、精神的なストレスにつながるケースもあるらしい。
脳梗塞の後遺症には、痙縮以外にもさまざまな種類がある。

痙縮への対処法
痙縮は「完治」を目指すというより、「生活に支障が出ないようコントロールする」という考え方で向き合っていくものらしい。方法はいくつかあり、組み合わせて使われることが多い。
リハビリテーション
中心になるのはリハビリだ。固くなった筋肉を定期的に伸ばすストレッチ、関節の可動域を保つための訓練、そして「食事」「着替え」「移動」など実際の生活動作に直結させたタスク指向型の訓練が行われる。反動をつけず、痛みの出ない範囲でゆっくり動かすのが基本で、専門職の指導のもとで行うことが前提になる。
短下肢装具や座位保持のクッション、手関節を固定するスプリントなど、装具で姿勢や動きをサポートする方法も併用される。
脳梗塞後のリハビリが実際どんな流れで進むかは、こちらでまとめている。

薬物療法・ボツリヌス療法(ボトックス)
内服薬による治療もあるが、痙縮が特定の部位に強く出ている場合はボツリヌス療法(いわゆるボトックス)が使われることがある。ボツリヌストキシンという成分を筋肉に注射し、過剰な緊張を抑える神経の働きを一時的に弱める治療法だ。
ただし、ボトックスは脳梗塞そのものを治すものではなく、あくまで「痙縮を和らげてリハビリの効果を高めるための補助的な治療」という位置づけらしい。効果は永続的ではなく、数ヶ月ごとに再注射が必要になることが多いようだ。
薬との付き合い方については、こちらの記事も参考にしてほしい。

より高度な治療
症状が重く、他の方法で十分な改善が得られない場合には、バクロフェンという薬を脊髄周囲に持続的に投与するITB療法などが選択肢になることもあるという。ただし、これは体への負担も大きい治療なので、医師との十分な相談が前提になる。
家族や周囲にできること
痙縮と向き合うのは本人だけではない。過度に介助しすぎず本人ができることは任せる、転倒や姿勢の崩れを防ぐ住環境を整える、といった周囲のサポートも回復を支える要素になるようだ。「治す」ことより「支える」という視点が大事、という考え方は、痙縮に限らず脳梗塞の後遺症全般に通じる話だと思う。
まとめ
痙縮は、脳梗塞の後遺症の中でも生活への影響が大きく、かつ「筋肉ではなく神経の問題」という点で誤解されやすい症状だ。麻痺・拘縮との違いを知り、リハビリと医療的アプローチを組み合わせながら、長い目でコントロールしていくことが大切になる。
俺自身は経験していない症状だからこそ、正しく知っておきたいと思ってこの記事を書いた。同じように痙縮に悩んでいる人、その家族の方の参考に少しでもなれば幸いだ。
著者:のぞむ(脳梗塞・心不全・糖尿病の当事者)
自分の闘病経験が、誰かの「まさか自分が」を防ぐヒントになれば、このブログを書く意味があると思っています。
※この記事は当事者の体験と公開情報をもとに作成しています。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。


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